丘の上の大きな桜の木の下で、また会おう
五人は、中に入る。

一人ずつ手を合わせた。
凱吾「おじさん……」

実和父「君達は……あ、中学の時の!
みんな、ありがとう!実和、喜んでるよきっと!」

宗匠「こんな形で、実和に再会することになるなんて…残念です…」
実和父「そうだね……」
紀信「どうか、お気を落とさずに何かあれば僕達が力になりますから!」
実和父「ありがとう!」

杏樹「……っ…すみません、何て言ったらいいか……」
杏樹が声を詰まらせながら言う。
実和父「そうだよね…突然だったからね……」

鈴嶺「う…っ…ひっくっ…」
鈴嶺は言葉にならない。

実和父「最期に、実和の顔…見てあげて。
事故で少し…傷ついてはいるけど、綺麗にしてもらったんだ」

五人は、棺の中で眠る実和の顔を見る。

まるで━━━━眠っているようだった。


杏樹「ほんと、綺麗…実和。寝てるみたい…」
紀信「そうだね。ちょっと揺すったら、起きそう!」
宗匠「実和ー、朝だぞ!起きろよ!」
杏樹「そうよ、実和!貴女、寝坊なんかしたことないでしょ?起きて!」

凱吾「実和!
………ほら、鈴嶺も!実和に声かけてあげな!」

鈴嶺「…っ実和ちゃ…起きてよ!また遊ぼ!
これで最期だなんて嫌だよ!お願い、起きて!!」

五人が必死に声をかけても、実和は安らかに眠ったままだった。


実和父「━━━━━━少し話せないかな?」

実和の実家へ移動し、父親の定食屋に来た五人。

実和父「今日は、ありがとう。
それにしても、立派になったね!
実和みたいな、ただの定食屋の娘と仲良くしてくれてありがとうね!」

凱吾「え?」
実和父「だって、君達五人…特に、凱吾くんと鈴嶺ちゃんと宗匠くんは有名な財閥のご令息とご令嬢だから。
紀信くんは有名な大学病院の病院長の息子さんで、杏樹ちゃんも有名な高級クラブのママさんの娘さん。
実和から聞いた時は、耳を疑ったよ!」

杏樹「それは関係ないですから……」

宗匠「あの、なんで実和は事故に?」

実和父「あー、私としては納得いかなくてね……」
紀信「え?どうゆうことですか?」

実和父「実和、◯◯コーポレーションの社長秘書として働いてたんだ」

杏樹「あー、ウチのクラブのお客様よ!」
凱吾「確か、ワンマンじゃなかったかな?そこの社長」
実和父「実和、最近全然休んでなくて……
14連勤してたんだ……」

凱吾「は?何、それ……」
五人は、信じられない思いで父親を見る。

実和父「その日も残業で疲れてた実和が、ボーッとしてたんだろうね……
赤信号の横断歩道を渡った故の事故なんだ」

鈴嶺「じゃあ…実和ちゃんは……」

実和父「私は、会社に殺されたと思ってる」
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