丘の上の大きな桜の木の下で、また会おう
定食屋内の雰囲気が、冷たく凍っている。

鈴嶺「ひ、酷い…酷いよ……」

実和父「ごめんね、こんな話……
でも……君達には、知っててほしかったんだ」

宗匠「許せねぇな」
凱吾「そうだな」

実和父「…………あ、後ね!
実和、最近よく言ってたんだ」

紀信「え?」
実和父「丘の上の大きな桜の木の下ってわかる?」

五人「━━━━━!!!?」

杏樹「知ってます。中学生の時に私達六人で見つけた場所です」

実和父「いつかまた、六人で会いたいって言ってたんだ。“丘の上の大きな桜の木の下”って言ったらわかるから、そこに待ち合わせて会うのを楽しみに頑張るって言ってて……」

鈴嶺「そうだったんだ……!実和ちゃん……」

実和父「だから、また……実和に会いに来てよ!
君達なら、いつでも大歓迎だから」

五人「はい!」



そして実和の父親に挨拶し、定食屋を出た五人。
そのまま思い出の“丘の上の大きな桜の木の下”に向かった。

紀信「懐かしい~!あの時のままだ!」
杏樹「そうね!」
鈴嶺「フフ…あ、ここ!見て!」

宗匠「おっ!ちゃんと残ってんじゃん!」
凱吾「ほんとだ」

そこには、六人の名前が木に彫られていた。

鈴嶺「実和ちゃん…」
実和の名前をなぞる、鈴嶺。

凱吾「鈴嶺…」
鈴嶺「凱くん…」
頭を撫でる凱吾に抱きつく、鈴嶺。
凱吾は、ゆっくり鈴嶺の頭を撫でる。

紀信「二人は、いつから付き合ってたの?」

凱吾「ん?」
紀信「こんな時にごめん。ちょっと、気になって」
凱吾「高校二年生になってすぐだったかな。高校はみんな別々になっちゃったけど、僕は鈴嶺に頻繁に会いに行ってたから」

紀信「そうだったんだ」
杏樹「いつ籍入れるの?」

凱吾「なかなか、鈴嶺の両親の許可がもらえないんだ」
宗匠「だろうな。鈴のこと昔から寵愛してたもんなぁ。過保護で、囲ってた」
凱吾「でも、もうそろそろ……」
宗匠「許可もらえんの?」
凱吾「うん。就職して落ち着いてきたし」

紀信「そうなんだ…」
呟くように言う、紀信。

宗匠「………」

杏樹「宗匠、どうしたの?」
宗匠「………いや。てか、鈴はいいのかよ、凱吾(これ)で」
凱吾を指差す、宗匠。

鈴嶺「うん!凱くんがいい!」
凱吾「これって失礼だよ」
宗匠「でもよ、そんな焦ることないじゃね?」
杏樹「まぁ、そうね」
紀信「僕もそう思う」

鈴嶺「みんなは、反対?」

宗匠「いや……」
杏樹「反対ってわけじゃ……」
紀信「ないけど……」

凱吾「別に反対されても、僕達は結婚する。
鈴嶺のご両親に許可得たら、すぐにでも!」
凱吾が三人に言い放った。

凱吾「じゃないと……鈴嶺が取られるから」
と、更に続けた。
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