丘の上の大きな桜の木の下で、また会おう
訃報
中学卒業してから、もうすぐ10年経とうとしていた冬の早朝。

凱吾のスマホが、鳴り響いた。

凱吾「ん…?鈴嶺?
━━━━━━もしもし?鈴嶺、どうした?こんな朝早くに」
寝起きの目をこすりながらスマホを操作し、電話に出る凱吾。

鈴嶺「……っ…ぐすっ…うー…」
電話越しの鈴嶺が、泣いている。
凱吾「━━━━鈴嶺!!!?どうした!!?
なんで泣いてる!?
どうした?ん?ゆっくりでいいから、言って?」

凱吾はガバッと起き上がり、鈴嶺に言い聞かせるように言った。

鈴嶺「実和…ちゃ…が……」
凱吾「実和?実和がどうした?」

鈴嶺「う……っ事故で…死んじゃ…った…て」





その日の夜━━━━━

凱吾達五人は、9年10ヶ月振りに再会を果たした。


葬儀場の前で待ち合わせをし、五人で一緒に行こうということになり凱吾が待っていると。

紀信「凱吾!」
凱吾「あ、紀信?」
紀信「うん!久しぶりだね!」
凱吾「あぁ!」
紀信「こんな形で再会なんて……ね…
違う形で、再会したかったな…」

凱吾「そうだな……鈴嶺、かなり落ち込んでて…どうしてあげたらいいかわからない」

紀信「え?凱吾、鈴嶺と会ってるの?」

凱吾「鈴嶺は僕の婚約者だ」

紀信「え……嘘…」
信じられない思いで、凱吾を見る紀信。

凱吾「紀信?」

杏樹「ごめーん!遅くなっちゃった!
………あれ?二人だけ?凱吾、鈴嶺は?」
凱吾「鈴嶺は、宗匠が連れて来てくれる」
杏樹「そっか!
紀信も!元気そう!」

紀信「杏樹、久しぶり!」
紀信は頭を振り、杏樹に向き直った。

杏樹「なんか、あんまり喜べない再会ね。
実和にも…生きてる実和に会いたかったな……」

凱吾「そうだな」
紀信「うん…」

宗匠「━━━━━━ほら、鈴。
みんな、待ってるぞ」
鈴嶺「………」

そこに宗匠に手を引かれて、佐木を後ろに控えた鈴嶺が現れた。

宗匠「わりぃ、遅くなった!」
佐木「皆様、遅くなり申し訳ありません」
鈴嶺「………」

紀信「宗匠、鈴嶺!久しぶり!佐木さんも!」
紀信が三人に寄っていく。

宗匠「紀信、この前振り!この前は助かった!」
紀信「びっくりしたよー、急にぐったりした人を連れて来るんだもん」
宗匠「あいつ、あんま飲めねぇクセに一気飲みなんかすっからなー」
紀信「でも、大したことなくて良かったよ!
………鈴嶺?久しぶり!」

鈴嶺「うん…紀信くん、久しぶりだね」
顔を覗き込む紀信に、小さく微笑み言った鈴嶺。

杏樹「揃ったから、行こ?」
凱吾「そうだな、鈴嶺!おいで?」
鈴嶺「うん…」

両手を広げる凱吾に抱きつく、鈴嶺。

凱吾「鈴嶺、ちゃんと最期のお別れしよう。
実和に会えるのは、これが最期だから」
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