丘の上の大きな桜の木の下で、また会おう
宗匠「大切だよ、鈴達の事。
でも、それと恋愛は違うだろ?」

鈴嶺『そうだね』


“羽柴 凱吾が冷酷な人間”
そんなことは、とうにわかっている。

それでも、凱吾を思うと“好き”と言う感情しか思い浮かばない。

いつだって会いたいと思う。
会うと放れたくなくなる。



宗匠「…………どっちが、幸せなんだろうな」

鈴嶺『え?』

宗匠「愛情がわからない事と、苦しくても人を愛する事。俺はそんなに苦しいなら、このままで構わねぇ」

鈴嶺『紀信くんが言ってた』

宗匠「ん?」

鈴嶺『あの頃に戻りたいって。
六人でいた、あの頃に……
確かに、あの頃はこんな苦しくなかった。
ただ純粋にみんなが大切で、みんなでいっぱいお話して、時には喧嘩とかして、仲直りしてまたいっぱい話して……』

宗匠「そうだな。あの頃はもっと、素直だった気がする。ただ真っ直ぐぶつかり合ってた。
ある意味、相手の気持ちなんか考えずに……
大人になると、それがなくなるもんな。
…………鈴。お前の思うようにやれよ!
ただ真っ直ぐぶつかり合おうぜ、また!」


━━━━━━━それから宗匠は、思い出の桜の木の下に来ていた。

煙草を咥え、ただ木を見上げていた。


中学生の凱吾達がいた。

鈴嶺『すごーい!凱くん、100点ばっか!』
杏樹『実和も!凄っ!!』

実和『でも、凱吾くんにはどうしても敵わない(笑)』

宗匠『凱吾に張り合うことが、無謀だぞ!』
紀信『フフ…だね!きっと頭の作りが違うんだよ、凱吾』

凱吾『は?僕、いたって普通の人間だけど?』

『ハハハッーーーー!!!!確かに(笑)』



何気ないことで、笑い合っていたあの頃。

何が五人を変えたのだろう。

“何を犠牲にしても、放れられない相手がいること。出来ることなら、一人占めしたい”

“凱くんが好き。一緒にいたい。
それだけじゃダメなのかな?”

“そんな人間に渡したくない!”



宗匠「なんで、みんな幸せになれねぇんだろ……?」


あの頃は、当たり前に幸せになれると思っていた。


宗匠「……………“また”ぶつかり合うか……!」



宗匠は、五人にメッセージを送った。




【丘の上の桜の木の下で、また会おう】

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