丘の上の大きな桜の木の下で、また会おう
杏樹「誰に?」

凱吾「まぁ、色々。
高校の時も凄かったんだ」

宗匠「高校?」
紀信「鈴嶺、女子高でしょ?」

凱吾「うん。
ほぼ毎日校門前に男子が集まってて、何事かと思ったら、鈴嶺を見に来てたんだから」
鈴嶺「だから、あれは違うよ。
他の子達のことを見に来てたんだよ」
凱吾「だから!何度も言うように、鈴嶺を見に来てたんだ!僕、何度も喧嘩売られたんだから!」

鈴嶺「違うのに…」
杏樹「まぁ、なんとなく想像つくわね」

紀信「そうだね」
宗匠「てか、凱吾。喧嘩売られてたのかよ!」
凱吾「うん。負けたら鈴嶺を渡せとか、族の女にするとか、何か色々…」

紀信「なんか、凄いね…」
宗匠「当然、返り討ちだろ?」
凱吾「うん。負けるの嫌いだから」


鈴嶺「━━━━━もっと、実和ちゃんとお話したかったなぁ……」
丘から少し下りた所に東屋があり、そこで休憩している五人。
杏樹「そうね」

鈴嶺「つい先週、ばったり会ったんだよ!」
杏樹「そうなの?」
鈴嶺「お買い物してたら、ばったり!
実和ちゃん、お仕事中だからってバタバタしてて……10分くらい話したの。
まさか……最期になるなんて思わないから、当然、また会えるって思ってたから、普通に“またね”って言って別れたの。
こんなことなら、怒られても引き止めて沢山お話しておけば良かった……!」
杏樹「鈴嶺…」

鈴嶺「今思うと、確かに辛そうだった。
もっと、ちゃんとお話聞いてあげれば良かった……そしたら、凱くん達とお仕事のこと解決させることができてたかも?
そしたら……実和ちゃ…死んじゃうこと……なかっ……っ…実和ちゃ…ごめんね…ごめんね……」
鈴嶺は話していて、涙が溢れていた。

凱吾「鈴嶺!もう考えるのやめよ?
悪いのは、そこの社長だ」
凱吾が鈴嶺を抱き締め、背中をさする。

紀信も鈴嶺の頭を撫でた。
紀信「そうだよ。鈴嶺は悪くない!
…………ねぇ、その社長、訴えること出来ないのかな?だって、労働基準法に違反してるでしょ?」

宗匠「そうだな。どっちにしても、実和の死を無駄にはしたくねぇ……!」
杏樹「そうね。私も、何かあれば協力するわ」

凱吾「そんなんじゃ、納得できないよ。
訴えたところで、罰金程度でしょ?
もっと……陥れてやる。
実和の死と、鈴嶺の苦しみの代償…払わせる」

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