丘の上の大きな桜の木の下で、また会おう
志田が帰り、杏樹はリビングで鈴嶺にメッセージを送った。

杏樹『起きてる?』
鈴嶺『うん!』
杏樹『電話していい?』

すると、鈴嶺から着信が入る。

杏樹「もしもし?」
鈴嶺『杏ちゃん!ごめんね、忙しいのに……』
杏樹「ううん。でも鈴嶺、寝てるって思ってた」
鈴嶺『………実は、待ってたの』
杏樹「もう…!寝てていいのよ?」

鈴嶺『でも、お話したかったし。後から電話するねって杏ちゃんが言ってくれたから』
杏樹「……ったく…で?どうしたの?」

鈴嶺『あのね。これからは、もっと頻繁にみんなと会いたいなって。凱くんや宗くんや紀信くんにも言ったんだけど、実和ちゃんみたいに後悔したくなくて……
だから杏ちゃん、今後はもっと五人で会お?』

杏樹「そうね」
鈴嶺『実和ちゃん、もっと話したいことあったんじゃないかなって思うの。
私は、それをわかってあげられなかった。
親友なのに……だからね……!』

杏樹「親友……か…」
鈴嶺『ん?杏ちゃん?』

杏樹『………ううん、わかった。
できる限り、会おう!」
鈴嶺『うん!』

杏樹「━━━━━でも、鈴嶺」

鈴嶺『ん?』

杏樹「あの頃とは、違うわ」

鈴嶺『え……?』

杏樹「あの頃から、もうすぐ10年経つ。
もう大人で、色々みんな抱えてると思うの。
実和だって、きっと色々抱えてたはず。
だからって全部話せるとも限らない……!」

鈴嶺『杏…ちゃ…
杏ちゃんは、何か抱えてるの?』

杏樹「………そうね…」

鈴嶺『杏ちゃん?』

杏樹「鈴嶺はないの?凱吾との結婚、本当はお許し出てないんじゃない?」

鈴嶺『え……どうして、わかるの?』

杏樹「実はね…おじ様とおば様に言われたの。
凱吾と鈴嶺を別れさせてほしいって」

鈴嶺『え?そんなことを…?』

杏樹「確かに凱吾は誠実だけど、融通が利かないでしょ?しかも凱吾独自のルールがあって、それに反する人を排除する冷酷さがある。
だから、不安みたいよ。
鈴嶺が傷つくんじゃないかって」

鈴嶺『………そうなんだ…』
杏樹「でも安心して?私は、凱吾と鈴嶺を別れさせようなんて思ってないから。
好きな人と一生一緒にいたいって気持ちは、何にも変えられないわ!」

鈴嶺『うん…ありがとう!』



杏樹「みんなが反対しても、私は味方よ!!」




最後杏樹は、自分自身に言うように言った。

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