丘の上の大きな桜の木の下で、また会おう
実和の死から、半月経った頃━━━━━

新聞やテレビで、実和が勤めていた会社が脱税で逮捕されたことが報道された。

しかも裏取引や、他にも違法な経営や社員への労働基準法違反なども発覚し、かなり大きなニュースになったのだ。


杏樹はその報道を見て悟った。

凱吾の仕業だと━━━━━



そして五人は、実和の実家に集まっていた。
実和の父親が呼び出したのだ。

実和父「ごめんね、また呼び出すようなことして……」
杏樹「いえ」

実和父「◯◯のニュース、君達の仕業?」

宗匠「はい。まぁ、正確には凱吾っす」

実和父「やはり、そうか」

凱吾「実和の死を無駄にはしません。
それに、社長のやり方は僕の倫理に反する。
まぁ、正直…こんなに粗が出るとは思ってませんでしたが……」

実和父「さすが、羽柴商事の御曹司だね」

凱吾「すみません、その呼び方は嫌いです。
僕は僕です」

実和父「あ、そうだね。申し訳ない。
ありがとう、凱吾くん」

凱吾「いえ、実和は友人ですから。
それに何より、僕の鈴嶺を泣かせた。
それが一番、許せない!」

実和父「そっか。二人は恋人同士?
あ…夫婦かな…?」
凱吾と鈴嶺の左手の薬指を見ながら微笑んだ。

凱吾「婚約者です」

実和父「そっか…」

凱吾「おじさん?」

実和父「君に渡したい物があって……」
凱吾「??」

実和の父親が、小さな紙袋を差し出した。

凱吾「何ですか?」
実和父「今、実和の遺品を整理してる最中なんだけど、これが保管されてて……
誰かへのプレゼントかと思って、中を見たんだ。
代わりに渡せたらって思ってね。
そしたら、君へのプレゼントだった。
今の君に渡すのは、きっと失礼だと思う。
でも、実和の気持ちを伝えてあげたくて……」

凱吾「僕に?
…………わかりました。ありがたく、受け取ります」
実和父「でも、中身を見るのは、君が一人の時がいいんじゃないかな?」
凱吾「………はい、わかりました」


実和父「━━━━━君達の口に合うかわからないけど、夕食食べていきなよ!もちろん、ご馳走するから」



夕食をご馳走になり、実和の仏壇に手を合わせ家を出た一行。

鈴嶺「━━━━━何かな?」
凱吾の持っている紙袋を見て鈴嶺が言った。

凱吾「うーん。まぁ、帰って見てみる。一人の時って言われたから」

杏樹「でも、実和が凱吾にプレゼントなんて、意外!」
紀信「そうだね。誕生日とか?」
凱吾「でも、中三から貰ってない。そもそも誕生日、まだ先だし」
宗匠「まぁ、そうだわな!」

杏樹「まぁ、なんとなく想像つくけど……」
宗匠「だな」

紀信「え?二人はわかるの?」
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