丘の上の大きな桜の木の下で、また会おう
宗匠・杏樹「うん」

鈴嶺「え?何?知りたーい!」
杏樹「いや、鈴嶺は知らない方がいいんじゃないかな?」
宗匠「だな。ほら、実和の親父、凱吾に一人の時っつてただろ?」

鈴嶺「そうだね!」

紀信「気になる…」



凱吾「━━━━━じゃあ、僕達こっちだから」
鈴嶺「またね!」
杏樹「うん!連絡するね~」
紀信「またねー」
宗匠「気ぃつけろよ」

凱吾と鈴嶺が、佐木の運転する車に乗る。

車が見えなくなり、紀信が宗匠と杏樹に向き直った。
紀信「ねぇ、何なの?気になる」
杏樹「ん?」
紀信「実和のプレゼント」
宗匠「あー、たぶんだけど……」

杏樹「実和、凱吾のこと好きだったのよ」

紀信「そうなの?」
宗匠「どう見てもそんな感じだったじゃん!」
紀信「まぁ、なんとなくそんな気はしてたけど…」

杏樹「あの子が全国二位だったのも、必死に凱吾を追いかけてのことよ」

紀信「じゃあ…実和」
宗匠「もしかしたら、凱吾に再会したらコクるつもりだったのかもな?
……………てか!お前もだろ?」
宗匠が紀信を見て、意味深に笑う。

紀信「え?」
宗匠「鈴」
紀信「━━━━━!!?」
宗匠「惚れてんだろ?」
紀信「なっ…/////!!?」

宗匠「だって、落ち込んでたじゃん!
凱吾と鈴のこと知って」

紀信「………はぁー、やっぱ、バレてたか……(笑)」
宗匠「バレバレ(笑)」

紀信「相変わらず、よく見てるね!僕達のこと」
宗匠「は?なんか、その発言…キモい…」
杏樹「フフ…宗匠が、一番仲間思いだもんね!
で、実は……凱吾が一番冷酷で、鈴嶺の為に“しか”動かない」

紀信「そうだね。実和のことも、鈴嶺の為にしたことなんだろうね。“鈴嶺を泣かせたから”」

杏樹「………」

宗匠「まぁ、だからって凱吾も鈴を傷つけることはしない。
鈴も好きだから、凱吾の傍にいる」
紀信「そうだね!鈴嶺が幸せなら、いいや!」
宗匠「そうだな」
微笑む、宗匠。

紀信「宗匠も好きなんだ?鈴嶺のこと」

宗匠「は?お前の好きとは違う」
紀信「え?」
宗匠「俺と鈴は、生まれた時からだからな。
俺達の両親同士も、親戚みたいに仲良いし。
家族みたいな感じなんだ。妹みたいな!
確かに好きかって聞かれりゃあ、好きだ。
でも、恋愛じゃねぇな」

杏樹「幸せなら……か…」

宗匠・紀信「は?」

杏樹「私達、みんな幸せになれたらいいな」

宗匠・紀信「???」


杏樹の呟きが、風に乗って消えた━━━━━
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