あ

まだ九月下旬の昼間。
夏の残暑が残る中で、私は一人、立ちすくんでいた。
そう、こうやって私は、いつも一人だった。

もうすぐテストがあるので、授業は一応最後まで受けたものの、いら立ちが増すばかりであまり集中できなかった。
下校のチャイムが鳴ると同時に私は教室を出た。
自然と歩くスピードが速くなっていく。
周りが私のことを見るたびに目を丸くしている。
みんなの視線が、ナイフのように突き刺さる。
どんな風に思われているのだろうか。
昇降口で急いで靴に履き替えると、下を向いていたため前にいた男の人に気づかずぶつかってしまった。
「あ、ごめ…」
「うわっ……最悪。行こ。」
……一瞬、目の前が真っ暗になった。
男の人たちは、友達と一緒に逃げるように行ってしまった。
彼の私を見る目。冷たくて、まるで見放されたような気分だ。
「違うのに……私じゃないのに……」
悔しい。とにかく悔しい。
なんで私がこんな思いをしないといけないのか。
昇降口を出ると、外には今一番会いたくない人物が立っていた。
「……自業自得よ。もうほとんどの人が知ってるんだから。」
川西遥。一体、私の何が気に入らないのだろうか。
彼女は勝ち誇った顔でいつもの二人と行ってしまった。
もう、いいや。
うわさを流されたのは、今日が初めてではない。
もはやもう慣れた。
道を歩いていると、どこからともなく視線を感じる。
そんなにみんな信じてるわけ？
封筒なんか存在すら知らなかったっつの。
しばらく歩いていると、どこからか甘い匂いが漂ってきた。