振り向くと、ちょうど車道の反対側に、クレープ屋台があった。
……美味しそう。
柔らかそうな生地に、苺をのせ、ホイップクリーム、チョコソースをかけて、優しく包む。上にはこれでもかというほどクリームをのせ、大きな苺を三つトッピングしてあり、仕上げにカラースプレーをかけたら……。
「はい毎度ー。」
「おじちゃんありがと!」
私と同じ制服を着た二人組の女の子たちが、クレープを受け取っていた。
「……食べたいけど、今月ギリギリなんだよね。」
私は、必死にクレープ屋から目を背け、早足でその場を離れた。

青山公園にきた私は、いつもの場所に移動した。
この公園の奥にある、私だけの特別な場所。
最近は勉強してたから、あまり来れてなかったんだ。
私はスカートのポケットの中にイヤホンがあることを確認して、広場を抜けた。
歩きなれた雑草だらけの道を、虫がいないか気にしながら歩いて行く。
少しして湖が見えてきたと思い、額に浮かんだ汗を拭う。
その時、何やら足にくすぐったさを感じた。
それはどんどん足を伝って上に上ってくる。
嫌な予感しかしない。恐る恐る下を見たら……足には、大きいバッタが張り付いていた。
「ぎゃーーっ!!!!」
心臓が抜けたように感じたが、死ぬ思いで空き地に飛び込んだ!
「え!?」
「来ないでー!!!!」
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