お母さんが事件に巻き込まれて亡くなった日の夜、私は一人で泣きながら眠りについた。一人で寝られるか聞かれたとき、小学二年生だった私は”寝れる!”と笑顔でうそをついた。寂しさを紛らわすために好きな歌を泣きながら歌ったことを今でも覚えている。
本当は誰でもいいから寄り添ってほしかった。頭をなでてほしかった。でも、私のウソに騙された大人たちは私を置いて自分の家族のもとへと帰っていった。仕事が忙しくてあまりお母さんと一緒にいられなかった私は、人への甘え方を知らず、迷惑をかけたくないと子供らしくないウソを当たり前のようについていい子を演じた。その結果、私は私のせいで、母が死んだときでさえ知らない大人のために笑顔を作った。
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