そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?
ハンナもソフィアの小さな手を改めて掴もうとしたが、大蛇が怒りを増幅したかのように声高にひと鳴き、邪魔するように二人の間に巨体を打ち付けてくる。
それほど頑丈ではない板の橋は折れ曲がり、足元が不安定となったソフィアはそのまま池の中へと落下する。
池のほとりで素足を水に浸したことはあっても、泳いだことはない。
しかも百センチにも満たないソフィアの足は底にまったく届かず、かなりの深さがある。
水中で必死にもがけば、水分を含んだドレスが体にまとわりついて邪魔をする。
思うように水面に顔を出せず、息苦しさだけが増していく中、ソフィアは水中で何かと目があった。
それが水蛇だと悟ると同時に、恐れは絶望に変わる。
私はもうここで死ぬかもしれない。
もし生まれ変われるなら、次は両親どちらにも愛してもらえる人生がいい。
そんなことを考えていると、息苦しさで意識が朦朧とし始め、霞んでいく視界で自分に向かって再び大きな口を開けた大蛇の姿を捕らえた。
目の前が真っ赤に染まるのと、自分の体が誰かに引っ張られたのはほぼ同時だった。
水の中から引っ張り出されたソフィアは咳き込みながら、「姫様!」と涙声で繰り返し呼びかけながら駆け寄ってくるハンナの姿を確認する。