そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?

池から長い首をもたげて、ちろちろと舌を出している水蛇、しかも見たことのないほどの大蛇にソフィアとハンナは凍りつき、ゼノン側からも驚きと怯えが混ざった悲鳴が幾つも上がる。

人を襲う生き物は数多くいれど、その中でも蛇は人を好物としている。

しかも大人の背丈の倍の大きさはあるため、子供など丸呑みされてしまうだろう。

大蛇と見つめ合い、身の危険は確かに感じているのに、心を恐怖に支配されてしまっているそソフィアの体はやはり動かない。

大蛇が薄気味悪いガラガラ声を発し、「姫様!」とハンナが庇うようにソフィアを抱きしめる。

ソフィアは温もりに包まれながら、自分に噛みつこうと大口を開けた大蛇の鋭い牙をハンナの肩越しに視界に捉える。

大きな口がゆっくりと近づいてくる感覚に陥ったその瞬間、どこから飛んできた氷柱が大蛇の頭部を掠め、苦しみ悶えるようにその巨大な身を左右に揺らす。


「姫様、今のうちです!」


ハンナが早口でそう告げ、ソフィアの手を掴んで走り出そうとした。

しかし、咄嗟の動きに対応できなかったソフィアはよろめき、前のめりに倒れそうになる。

なんとか踏ん張り転倒は免れたが、繋いでいた手は離れてしまい、ソフィアは縋るようにハンナへと手を伸ばす。

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