そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?
平和への祈りを捧げる神聖な儀式ともされているため、雨が降ろうが槍が降ろうが決して最後まで進行を止めてはいけないとされているのを、先日読んだ中月祭に関する本に書かれてあったのをソフィアは思い出す。
雨が強くなり周囲の大人たちが動揺する中、ソフィアは演舞を最後までしっかり見届けたいと舞台へ視線を戻し、前髪から顔を伝い落ちてくる滴を指先で拭う。
急に冷気に包み込まれ、ソフィアはハッとする。
足元に転がり落ちていく氷の粒から視線を頭上へと昇らせて、「お父様」とぽつり呟いた。
ゼノンが背後に立っていて、自分の周りの狭い範囲だけ、雨粒が全て氷となっている。
「これはお父様が?」
「雨はすぐに止むだろうが、今は邪魔だ。これほど魂のこもった舞は簡単に見られるものじゃない。記憶にしっかり留めておけ」
「はい!」
神様が降らせた雨さえも邪魔だと跳ね除けながらも、ゼノンが舞台から目を逸らさないでいる様に、自分と同じように最後までしっかり見届けたいと思っているのではないかと想像し、嬉しくなる。
ゼノンの言葉通り、雨はほどなくして止み、演じ手全員が掛け声を発しながら息を合わせて舞う最後の見せ場で空に虹がかかり、演舞は拍手喝采と共に幕を閉じた。