そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?

そして大きく視界が歪んだ後、自分を取り囲んでいたたくさんの絵は、全く違うものへと変化した。

真っ黒な服に身を包み、泣いている大人たちを、幼い女性が無感情に見つめている。

ソフィアが感じる感情は、両親が亡くなってしまった悲しさと寂しさ。

幼い女性の傍には、老婆がひとり。

質素な家でふたりだけの生活が始まり、やがて女性はランドセルを背負うようになり、身長も徐々に老婆……祖母を追い越していく。

セーラー服からスーツ姿となり、幼かった顔だちもすっかり大人のそれになった時、再び悲しみに包まれる。

祖母が虹の橋を渡ってしまったことで女性はひとりぼっちになり、塞ぎ込むことも多くなる。

祖母と住んでいた家、通学路、通った学校。

小さなオフィス、混雑気味の電車、いつも立ち寄るスーパー。

ひとりで住んでいるマンションの一室、毎年欠かさなかったお墓参り。

女性の目を通して見える寂しさに包まれた世界は、知らないはずなのに見覚えがある。

ソフィアの意識の中へ女性の経験や感情や流れ込んで来れば、徐々に彼女と一体化していくような感覚に陥っていく。

そして、仕事を終えて帰宅すべく駅に向かっている途中、不意に女性の目にゲームの広告が飛び込んできた。

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