そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?


『魔王様、格好いい! ゼノン様も攻略対象だったら良かったのに』


父本人だと裏付けるかのように聞こえた名前に、これはどういうことなのかと激しく動揺する。

ゼノンの隣に現れたマシューもいつものようににこにこ顔で、まるで本当にそこに彼がいるような気持ちにさせられる。

しかし、ふたりの後ろに見える森の風景は鬱蒼とはしていなく、自分の知っているそれではない。

似ているだけと思い直そうとした時、ゲームに関する女性の新たな知識、楽しさに満ちた感情、そしてがらりと一転し、女性が自動車事故に巻き込まれた瞬間の記憶がソフィアの中に一気に流れ込んでくる。

それがおそらく女性の最期だったのだろう。

伝わってきた恐怖や痛みに慄き震えながら、暗闇の中へと飲み込まれていった。



ソフィアはゆっくりと目を開けたのち、なんとか身を起こして横たわっていたベッドから室内をぼんやりと見回した。

ここは慣れ親しんだ自分の部屋で間違いないとホッとすると同時に、変な夢を見たと気だるい息をつく。

口内に池の水の味が残っているような気持ち悪さだけでなく、夢の中の女性の寂しさや悲しさ、そして明るい前向きさまでも心の中にしっかり残っているような気がして顔をしかめていると、扉が開いて湯気の上がっている桶とタオルを手にしたハンナが室内に入ってきた。

< 18 / 276 >

この作品をシェア

pagetop