そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?
「姫様、お気づきになられたのですね!」
ソフィアに気づいて、ハンナはベッド脇まで一気に歩み寄ってくる。
サイドテーブルに桶を置いて、安堵の涙を目に浮かべながらソフィアの手を両手で握りしめた。
「……私、水蛇に襲われて」
「大変危険な目に遭わせてしまって申し訳ありませんでした。私がもう少し気を配れていれば、姫様に怖い思いをさせずに済んだのに」
俯き自分の手を握りしめて、嗚咽を漏らし肩を震わせるハンナへ、ソフィアは「泣かないでハンナ」と小さく声をかける。
なかなか顔をあげないハンナをじっと見つめていると、やがて、ハンナの頭上に文字のようなものが現れ、ソフィアはギョッとし目を大きくした。
ソフィアはハンナから少しずつ文字を学び始めたばかりだけれど、このような形は見たことがない。
しかし、覚えはあった。それと同じようなものを、ソフィアは夢の中で目にしている。
女性の世界にあった文字だ。
確信に近い思いを抱いた瞬間、夢の中で目にした様々なものがソフィアの脳裏に一気に蘇ってきて、女性と繋がってしまったような感覚にぞわりと背筋を震わせた。
やがて顔をあげたハンナに「喉は乾いておりませんか?」と涙声で問われ、ソフィアは「お願い」と呟き返す。