そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?

「少々お待ちくださいね」と身を翻し、ハンナは水差しが置いてある部屋の真ん中にあるテーブルへと向かっていく。

少し痩せたようにも見える後ろ姿を、ソフィアは改めてじっと見つめていると、再びハンナの傍に文字が現れた。


「ハンナ・ブレンドル」


見えた文字を言葉にすると、ハンナが水差し片手にこちらへと振り返った。


「はい、姫様どうしました?」

「うっ、ううん。なんでもないの。ただ呼んでみたかっただけ」


慌ててそう誤魔化しながら、ソフィアはどういうことと口元を引き攣らせる。

文字は違う世界のものでわからないはずなのに、なぜか今度はしっかり読めてしまった。

いったいどうしてと疑問が膨らむが、思い当たるのは先ほどの繋がってしまったようなあの感覚。

読めただけでなく、電車や車、スマートフォンに女性の暮らしていた東京という人の多い街並みなど、本の中でも目にしたことのない物が、ソフィアの知識として新たに蓄積されている。

あれはやっぱり、ただの夢ではなかったと動揺しながらも、再びソフィアはハンナの横の文字へと視線を戻す。

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