そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?

冷めた笑みと、声音からも信じていないのが伝わってしまったようで、マシューの顔が驚きで満ちていく。

それを目の当たりにし、今のはいつもの私らしくなかったかもしれないとソフィアはぎこちなくマシューから目をそらした。

微妙な空気になった室内へ、白衣に身に包んだ老いた王宮医と、王宮医の荷物を両手で抱え持ったハンナが遅れて入ってくる。


「これ、マシュー。姫様に無理をさせるでない!」


王宮医は、顔色の悪いソフィアとそんなソフィアの手を握りしめているマシューを見て、すぐさま声高に注意した。

言われて気付いたのか、マシューは「失礼しました」と握りしめていた手を慌てて離す。

そのままベッドまでやって来た王宮医からソフィアは軽く問診を受け、脈も看てもらう。

額にかざされた王宮医の手が光り輝き、小さな魔法陣が現れる。

そこから流れ込んで来た温かさが、ソフィアの体の中をゆっくりと巡り、やがてふっと消えていった。

王宮医は治癒魔法を施して「三日は安静にするように」と告げると、自分の仕事は終わったとばかりにソフィアに背を向け、ハンナに「すまないが、茶を一杯もらえないか」とお願いする。

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