そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?

心臓から全身へと気を巡らせつつ、手のひらから目標物(患部)へと一気に波動を放出する。

本には、この波動の放出の調整が出来る様になるのが最初の難関だと書かれていた。

波動とやらを試してみたいが、昼間は大抵そばにハンナがいるため実行に移しづらく、そこでソフィアはまだ夜が明けきれないうちに静かにベッドを出た。

寒さにぶるりと身を震わせて、寝巻きの上にクローゼットの中から引っ張り出したコートを羽織る。

机の上に置いてある『光の魔力、初級編』を手に取ってから、ベッド脇のサイドテーブルにあるハンナの生活魔法で灯されたランプの灯りを頼りに、ベッドに腰掛けた。

本のタイトルこそ初級編となっているけれど、魔法の基礎とされている生活魔法すら未習得の自分にはやっぱりまだ早いだろうか。

そんなことを考えながら、ソフィアがページを捲った時、窓の向こうから馬のいななきが聞こえてきた。

騎士団の宿舎近くに馬小屋はあるが、ソフィアが暮らす屋敷のそばで目にすることは滅多にない。

馬小屋から脱走でもして、この場所に迷い込んだのだろうかと不思議に思って、ソフィアはベッドに読んでいた本を置いて立ち上がった。

窓から外を見て、すぐに「あっ」と声を発する。

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