そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?
屋敷の庭に一頭の真っ白な馬がいて、右の前足を庇いながら少し歩いては立ち止まってを繰り返していた。
「足を怪我しているのかしら」
呟いてソフィアはハッとし、すぐに窓のそばを離れた。
ドアを静かに押し開けて、極力足音を立てないようにしながら廊下を進んでいく。
階段を降りて、玄関の扉をゆっくり押し開けて、凍えるような寒さの中へと飛び出す。
これは実践のチャンスだわと緊張しながら、暗闇でも目立つ白馬に歩み寄る。
白馬は突然現れたソフィアに警戒するが、やはり足が痛いらしくその場から動くのも辛そうだ。
子供の足で七、八歩分ほどの距離を置いてソフィアは立ち止まり、白馬と相対する。
「わ、私、怪しい者じゃないわ。ただちょっと試させてもらえたらと思って」
一歩歩み寄ると同時に手を伸ばしたが、白馬がすこぶる不機嫌にいななき、ソフィアはびくりと手を引き戻した。
光の魔力を試せるチャンスを逃したくなくてここまで来てしまった。しかし、足の痛みからか白馬は明らかに気が立っていて、これ以上近づいたらソフィアが蹴り飛ばされ、怪我をすることになるだろう。
そして今更ながら、初心者は小動物の治癒から始めるのが良いと本に書いてあったのを思い出し、失敗したかもと深く考えずに行動してしまったことを後悔する。