そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?

荒ぶる白馬に背を向けて逃げ出すのも怖い。足が竦んで、動けなくなってしまったソフィアだったが、白馬の右前足に目を止めて、息をのむ。

よく見れば出血もしていて、怪我は思っていたよりもひどいようだった。

思わず視線をあげると白馬と目が合う。

数秒後、興奮気味にしか見えなかった眼差しから、苦痛さを感じ取り、ソフィアの足は自然と前へ進み出す。


「大人しくしていて。私が何とかしてあげるから」


ソフィアは馬の前で足を止めてしゃがみ込むと、短く息を吐き出す。

本の内容など頭の中から抜け落ち、何とかしてあげたいという一心だけで体が自然と動いた。

体の中を熱く巡る気の流れを頭の中でイメージしながら、そっと広げた二つの手のひらを患部へ近づけていく。

すると、手のひらが一気に熱を帯び、その先に金色に輝く魔法陣が浮かび上がってくる。

それは鮮血が溢れ出ている傷口を覆うようにぴたりと吸着し、そのまま白馬の体の中へとゆっくり吸い込まれていった。

ソフィアは大きく息を吐き出してから、脱力するようにへたりこむ。

わずかな目眩を覚えつつも、顔を上げて白馬に笑いかけた。

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