そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?

着替え終えるとすぐに、ソフィアはハンナと共に食堂へ移動する。

テーブルにはパンやスープにサラダが人数分並び、ちょうど準備が整ったところだった。

侍女たちから「姫様、おはようございます」とにこやかに挨拶され、もちろんソフィアも挨拶を返し、「いい匂い、美味しそう!」と目を輝かせて自分の席に着く。

「早く食べましょう」とソフィアが声をかけると、ハンナや侍女たちも次々と席につき始め、五人揃ったところで「いただきます」と明るい声が響いた。

いつものように賑やかに食事を始めて十分ほど経った頃だった。

玄関口の方から「失礼する」と声が掛けられ、聞き覚えのある声音にソフィアは思わずスープを吹き出しそうになる。

すぐさまハンナが立ち上がり、廊下へと足早に向かっていく。他の侍女たちも、驚きと同様で顔を強張らせながら、次々と席を立ち始めた。

そのうち相対することになるだろうとは思っていたが、こんなに早く向こうからやってくるとは思ってもいなかった。

ソフィアは恐る恐る戸口へと振り返って、大きな黒いバッグ片手に食堂に入ってきた人物へと愛想笑いを浮かべた。

< 58 / 276 >

この作品をシェア

pagetop