そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?
「もういいわよ」と囁いて手を引けば、リスは軽快に二回転ほどしたのち、元気よく走り始め、「あの子、また枝から落下して怪我するわね」と予言めいたことをソフィアは呟く。
あのリスに出会ったのは週初めの散歩の時。
悲痛な鳴き声に気がついて近寄れば、木の根元に足に怪我をしている状態で動けずにいたのだ。
襲いかかってくることを危惧して心配がるハンナをよそに、ソフィアは光の魔力を使えるチャンスに、嬉々としてリスに近づいていった。
この三ヶ月、ソフィアが光の魔力を使って治癒行為を行う様子を、ハンナは何度か目にしていたが、リスの治癒を難なくやってのける様子に改めて感心し、期待に胸を踊らせる。
ソフィアがランプに火を灯したりする生活魔法すらおぼつかないことを知っているため、そのギャップこそが才能の証のように思えて仕方なかったのだ。
そして今日も、図書館に向かう途中でリスの鳴き声が聞こえてきて、今に至る。
「傷薬を塗って、包帯まで巻けたら完璧なんだけど。薬草があれば、傷薬も自作できるのに」
自分の治癒魔法など応急処置と呼べる程度でしかないとわかっているからこそ、ここで終わりでは無く、傷が綺麗に治るまで診てあげたいのだ。