そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?
ソフィアの呟きに、走り回っていたリスがぴたりと停止し、くるりと振り返る。
そして再び走り始めたあと、ソフィアの目の前を通り過ぎ、すぐそばの藪の中へと勢いよく飛び込んでいった。
何してるのかしらと瞬きを繰り返していると、消えた先からリスが大きく鳴き声を発した。
「またどこか擦りむいたのね⁉︎ だからもう少し落ち着いた方がいいって……わっ」
ソフィアは慌てて立ち上がって走り寄り、茂みを掻き分けて目にした光景に、呆然と声を上げる。
下げていたポシェットから薬草の本を取り出し、「これって、これって」と言いながら一面に生えている青々とした草へと近づき、汚れるのもお構いなしにその場にぺたりと座り込む。
草をひとつ、根っこから引き抜いて最初のページに書かれてある草の葉の形と照らし合わせる。
葉先がギザギザと尖っていて、透かすと葉脈が赤く見え、ソフィアは嬉しくて顔を輝かせる。
「間違いない。これはムンターン草! 屋敷の目と鼻の先にあるなんて、これだけあれば、好きなだけ作れるわ。やったー!」
ソフィアの喜ぶが伝わったのか、リスも嬉しそうにソフィアの周りを駆け巡り、そして近くの木の幹へと勢い余って激突し、ハラハラと枯れ葉が舞い落ちてくる。