そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?
「う、嘘でしょ。しっかりして!」と大声を上げると同時に、「姫様!」と怒りの声が頭上から落ちてきた。
あっと息を飲んで視線を上げると、怒り心頭のハンナが腕を組んで立っている。
「途中で消えたと思ったらこんなところに。どれだけ探したと思っているんですか」
「ご、ごめんハンナ」
「土遊びは後にしてください。ほら、図書館に行きますよ?」
ハンナに促され、ソフィアはポシェットの中にあったもう一冊を取り出してから、代わりに先ほど引き抜いた土がついたままの薬草をそのまま仕舞い込んだ。
二冊の本を両手で抱えて立ち上がり、一面に生い茂っている薬草に後ろ髪を引かれながらも、すでに歩き出しているハンナを追いかけた。
ふたり並んで図書館に足を踏み入れたところで、本を抱え持った受付の女性がちょうど通りかかり、ソフィアに向かって会釈した。
愛想こそなかったが、頭を下げられたことなどこれまで一度もなかったため、ソフィアはハンナと顔を見合わせる。
魔力属性の鑑定後、瞬く間にソフィアの属性が光だということが広まったようで、それに合わせて周りに変化が起きている。
最も顕著に現れているのが、この図書館で働く魔族たちだ。