そんな裏設定知りません! 冷酷パパから結婚を申し込まれましたが、これって破滅フラグですか?
先日なんて、本を探していたら「何をお探しで?」と向こうから声をかけてきてくれたのだ。
また嫌味を言われるかもと少しビクビクしながら「薬草の本を」と正直に打ち明けたソフィアに、館の職員の女性は「それなら」と色々と説明を加えながら、一緒に本を選んでくれたのだ。
「姫様が一生懸命勉学に励んでおられる姿を見て、応援したいと思うようになったのでは?」
ハンナは呆気に取られているソフィアに微笑みかけてから、耳元で小声で話しかけた。
「……それなら嬉しいけど」とソフィアは苦笑いを浮かべる。
実際に礼儀正しく接してもらっていてもいまいち信じられないのは、悪態をついてきたり不快感を露わに睨みつけてくる魔族も以前より多くなったように思えるからだ。
ハンナとソフィアが返却の列に並んだところで、前にいた男性が振り返って嫌そうに顔を顰めた。
ソフィアは「早速遭遇ね」と心の中でため息をつく。
男性は貴族服で、手には分厚くて鎖のかかった貴重そうな本を抱えていることから、それなりの身分がありそうだと予想する。
男はチラチラとソフィアを肩越しに振り返った後、大きなため息と共にくるりと踵を返して体ごとソフィアと向き合う。