イケメン、お届けします。【注】返品不可
ささくれだった心の中で、「イケメンバーにカップルで来るんじゃねーよ!」とツッコミつつ、先を続ける。


「それから、いつものように部屋を掃除して、干しっぱなしの洗濯物を片付けて……すべての靴下をちぐはぐな組み合わせにしてやりました」

「地味な復讐だけど……イラッと来るのはまちがいないわね」


わたしが実行した復讐の内容を聞いたルミさんは、なんとも言えない顔で呟いた。


「それから、彼がシャワーをしている間に『急用ができた』とメモを残して部屋を出て、合鍵をポストへ返却。ここまでの道すがら、彼のアドレスを抹消、アカウントをブロック、電話番号は着拒にしてミッションコンプリートです」

「完璧だけど……報復されたりしない?」

「大丈夫ですよ。浮気……いえ、本命相手とイチャつくのに忙しいでしょうし。今後、仕事で顔を合わせる機会があるかもしれないですけど、むこうにとってはこちらが『お客さま』ですし。クビになりたくなければ、妙な真似はしないでしょう」


最寄り駅は同じだが、偶然会ったあの日を除いて、彼と出勤や帰宅の時間が被ったことはなかった。無理して会おうとしなければ、すれ違い続けるはずだ。


「でも、一応気をつけてね? 逆恨みする人間は珍しくもないんだから」

「はーい。それにしても、どうして毎回こんなことになるのかな……。わたしの何が悪いんでしょう? ルミさーん」

「毎回って……そんなに?」


わたしがカレシと長続きしないことはルミさんも知っている。
しかし、自慢にもならない悲惨な恋愛遍歴の詳細を打ち明けたことはなかった。


「浮気、二股、キャッチセールス、ホストまがいなど経験済みです。そもそも初カレからしてろくでもなかったなぁ……」


高校三年生のとき、同じクラスの男子に勇気を出して告白してOKをもらい、初カレができた。
が、翌日クラス一の美女から告白された彼は、あっさりそちらに乗り換えた。

大学二年生のとき、サークルで知り合った先輩から告白されて付き合った。
が、偶然にもバイト先の子と二股されていることが発覚。
修羅場になるかと思いきや、彼女も怒り心頭。一緒にその先輩を呼び出し、左右から平手打ちを食らわせた末、二人同時に別れを告げた。

ちなみに、彼女とはいまでも飲み友だちだ。

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