イケメン、お届けします。【注】返品不可
「俺の用事は済んだから、今度はあかりの好きなものを見よう。服でも靴でも遠慮なく言え。迷子に振り回されて、ロクに買い物を楽しめなかっただろう?」
オオカミさんは、律義にもインテリア用品店を出たところから、ウィンドウショッピングをやり直そうかと訊ねてくれた。
「そうですねぇ……。でも、もともといますぐ欲しいものがあるわけじゃないので。ちょっと休憩しませんか? コーヒーとか」
取り立てていますぐ欲しいものがあるわけではないし、オオカミさんも映画の恐怖と迷子の一件で疲れているだろう。
「それならいっそ、早めにディナーを取るのはどうだ?」
「……言われてみれば、ちょっとお腹空いてるかも」
「フレンチと和食の家庭料理。どちらがいい?」
「家庭料理がいいです!」
オオカミさんは和食が好きだと言っていたし、わたしとしても畏まってマナーを気にしながら食べるより、おしゃべりしながら気楽に食べたい。
「少し歩くことになるが、いい店を知っている。そこでもいいか?」
「ぜんぜん構いません! これから食べる分、先にカロリーを消費しておきたいんで」
「歩いて十分ほどだ。大して消費はできないと思うぞ?」
「いいんです。ちょっとした積み重ねが大事なんですから」
「どうして女性はダイエットばかりしたがるのか、理解に苦しむな」
「じゃあ、太っててもいいって言うんですか? そう言いながら、出るところは出て、引っ込むべきところは引っ込んでいるナイスバディの美女に誘われたら、ホイホイついて行く人がほとんどですよ。男性の言う『そのままの君が好きなんだ』という言葉ほど、アテにならないものはないです!」
オオカミさんに導かれるまま、駅の南側に広がる繁華街へ向かいながら、一般的な男性の反応について主張する。
「好きというのは、相手の全部をひっくるめての『好き』だろう?」
「オオカミさんって、心が広いんですね? お付き合いする人は、きっと幸せになれるでしょうねー」
自分でもかわいげのない言い方だとわかっていたけれど、素直に受け止められない。
化粧が濃いのはイヤだと言いながら、本当にすっぴんでいれば「手抜きしすぎ」「女に見えない」と言い出し。
女のコはちょっとふっくらしているくらいがいいなんて言いながら、スタイル抜群の女子に誘われればコロッと落ちる。
わたしに見る目がないだけかもしれないが、そういう男性ばかりを見て来た。