愛しの三味線侍
クスクスと笑いながら問いかけてくるその笑顔はいたずらっ子みたいだ。


「今日は舞ちゃんが来てくれたから、特別」


ドクンッと、今までにないくらいに心臓が大きくはねた。


「舞ちゃんは俺にとって特別な人だから」


「それって……」


言いかけて、口元に人差し指を添えるように近づけられて、口を閉じた。


「俺、こまめに連絡取るタイプじゃないし、この仕事もいつどうなるかわからない。
それでも、舞ちゃんの彼氏になりたいと思ってる」


一弘の頬がほんのりピンク色に染まる。


緊張がこちらにまで伝わってきてしまいそうだ。


「俺、舞ちゃんのことが好きなんだ」


心地のいい声。


指先にできた努力の跡。


奇抜な衣装。


私の心の中から健という澱をはじき出してくれた人。
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