旦那様は征服者~孔明編~
学校裏の人気のない場所に対当している、牡丹と秋雨。


「いつから知ってたの?」

「最初からだよ」

「そう…」

「どんな人なんだろうって楽しみにしてたんだ!」

「は?」

「皇木 孔明の奥さんが、ここの学校にいるって父さんから聞いてたから」

「それで、私に何を?」

「ん?」

「何かあるから、私に声かけてきたんでしょ?」

「だって牡丹ちゃん。
“あの”皇木 孔明の弱点だろ?
君が手の中にあれば、父さんが花神に殺されることはない」

「は?」

「父さんさ。
花神の仲間だったんだ。
裏でずっと繋がってて……
━━━━━━━でも、裏切ったんだ」

「え?そう…なの?」

「うん。
今のところ、父さんはまだ生かされてるんだけど……
時間の問題だと思うんだ」

「………だから…私を?」

「うん。
それに、彩名ちゃんは知らないんだよね?
君が、花神組の組長の奥さんだなんて」

「え、うん…」

「脅すつもりないけど……
知られたくないでしょ?」

「それは……」

「君の唯一の友達だもんね!
…………彩名ちゃんには内緒にするから、皇木 孔明を止めてよ!」


それは違う━━━━━━

秋雨は勘違いしている。

逆だ。
そんなこと言えば、その瞬間……孔明に消されてしまう。


「それは違うよ。
手を出されないようにするには、私に関わらないことだよ!
私が変に孔明様に中浜くんのことを言っても、怒らせるだけ」

「え?」

「孔明様は、普通じゃないから」



そこに、牡丹のスマホのバイブが響いた。
牡丹はビクッとして、ゆっくりポケットからスマホを出し画面を確認した。


【孔明様】


「…………中浜くん」
牡丹はスマホ画面を見たまま、緊迫感のある声で秋雨を呼んだ。

「え?」

「逃げて」

「は?」

「いいから、逃げて!!」


「━━━━━牡丹」
かさっと枯草を踏む音が響き、低く、重い声が響いた。

「あ…孔明様……」

「なんだ、この、裏切り行為は………」

恐ろしい雰囲気を醸し出した孔明が、ゆっくり近づいてくる。

「孔明様、これは………」

「またお前に“最初から”教え込まないとならないみたいだな」

「孔明…さ…」



「お前は何者で、誰のモノで、何をしなければならないか」

牡丹の頬を包み込み言った孔明は、そのまま食べるように牡丹の口唇に食らいついた。
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