旦那様は征服者~孔明編~
籠の中の鳥
牡丹は、まさに孔明が囲う籠の中の鳥その物だ。

何をするにも何処に行くにも、孔明の許可と監視が必要だから。


「牡丹。じゃあ…行ってくる。
お前が起きる前には帰ってくるからな……」
孔明に壊れる程抱かれ、ぐっすり眠ってしまった牡丹の頭をゆっくり撫でて言った孔明。

もう一度シャワーを浴び、仕事に出ていったのだった。

孔明が出ていって、一時間程した頃。
牡丹のスマホが鳴り出した。


寝ぼけながら辺りを見渡し、孔明がいないのを確認してスマホを取る。

画面には【彩名】の文字。

「ん…もしもし?」
『牡丹?ごめんね、こんな夜遅くに…』
「ううん、大丈夫だよ。
私こそ、ごめんね。ずっと連絡してきてたんだよね?」
『うん…しつこくて、ごめんね…』
「ううん。でも、どうしたの?」

『実はさ。私、お見合いさせられそうで……』

「え?お見合い!?」
『うん…』
「でも、彩名。誠人(まこと)くんがいるでしょ?」
『うん。だから嫌って何度も言ってるんだけど、聞く耳をもってもらえなくて……』
「そうなんだ……」

『牡丹はいいなぁー
好きな人と結婚できて!』
「うん…」

『あ、それでね!明日なんだけど……誠人とデートするの。でも誠人の名前出すと親には反対されるから、牡丹と遊びに行くってことにしてくれないかな?
牡丹には迷惑をかけないようにするから、名前を使わせてほしいってゆうか……』
「………わかった!もし、連絡が来たら一緒にいるって言えばいいんだよね?」

『うん。ごめんね…迷惑かけて……』


夜が明けて、孔明が帰ってきた。

「おかえりなさーい!」
伊丹が出迎える。
「ただいま。牡丹は?」

「まだ、寝てます。
夜中に、港山の娘と電話してたようですよ」
そして、まるで妻のように孔明のジャケットを受け取り、着替えの手伝いをする。

「で?内容は?」
「港山の娘の恋人とのデートのアリバイ作りに、牡丹さんにお願い事をしたようです。
牡丹さんと会っているってことにしてほしいと……」
「そうか。わかった」

そう……全て、孔明には筒抜けなのだ。

牡丹は知らないが、マンション内は監視カメラが設置されていて、常に牡丹は見られている。

スマホ内の内容も、アプリが仕込まれていて筒抜けだ。
牡丹に電話やメッセージ等入ると、自動的に伊丹のスマホにも同じ内容が送られるのだ。


そして孔明は、ベッドルームへ向かった。
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