財界帝王は初恋妻を娶り愛でる~怜悧な御曹司が極甘パパになりました~
 だめだ。このままでいると紗世の唇を奪いたくなる。

 スコッチを飲み、ひと息ついたところに、紗世はイヤリングをつけてほしいと頼む。

 どうしたんだ?

 海外転勤の話をするつもりだったが、今は紗世とのこの時間が愛おしく、口に出来ない。それに酔っている今、真剣な話をするべきではないかもしれない。

 紗世の俺への気持ちはわからないが、どうやら彼女は俺をからかうのが楽しいようだ。そうなると、紗世の調子に合わせたくなる。

 イヤリングをつけようと彼女の顔に近づけ、耳朶をつまむ。

「紗世の耳朶は赤ちゃんの肌みたいに柔らかいな」

「あ、赤ちゃんの肌なんて、京極さん知っているんですか?」

 俺に触れられて動揺している様子だが、嫌がってはいない。恋人もいないと言っていたから男を知らないだろう。

「まったく……紗世は男に慣れていないな」

 そう言うと、彼女の口からから驚く言葉が出る。

「そんなことないですよ」

〝そんなことない〟……? 彼女は見かけほど清純ではないのか?

「慣れていないわけじゃないです。後腐れのない関係が好きなので、特定の人がいないだけで」

 表情には出さなかったが、紗世の発言には驚かされた。
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