財界帝王は初恋妻を娶り愛でる~怜悧な御曹司が極甘パパになりました~
「よろしくお願いいたします」

 私も隣の母にならって頭を下げた。

 中山社長と角谷副社長が事務所を出ていき、母が「ふぅ~」と息を吐く。大金をつぎ込んでこの展示会にかけているので、ここまで来てホッと安堵したのだろう。

「あとは我妻さんのところで、花材を確認しないとね」

 展示会は三週間後になる。

「はい。今日は師範の花材を個々に確認します」

 事務所では私はいち従業員なので、家元の母でも敬語を使う。今日は日曜日なので、工藤さんは休みでふたりきりだけれど、けじめはつけることになっている。

「頼むわね。私はこれからお稽古だから、自宅へ戻っているわ」

「はい」

 母は今シックなブラウンのワンピースで、自宅に戻ってお稽古のために着物に着替える。

 母が事務所を後にして、私は奥の給湯室に歩を進めてインスタントコーヒーを淹れる。好みは牛乳たっぷりのカフェオレなのだがここにはないので、お砂糖だけを入れてスプーンでかき混ぜながらデスクに戻った。
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