財界帝王は初恋妻を娶り愛でる~怜悧な御曹司が極甘パパになりました~
 電話を切った彼女も当惑しているが、「落ち着きましょう。コーヒー淹れてきます」と言って席を立った。

 母がやって来たのはそれから三十分後で、一緒に表参道駅近くにある中山社長の事務所へ向かう。マンションの一室を事務所にしていて、エントランスでチャイムを鳴らすも不在だったも不在だった。

 母は紹介者であるWファクトリーフローランスの我妻社長にも電話をかけたが、社長も寝耳に水で驚いていたそうだ。



 警察に被害届を提出して自宅に帰宅したのが十八時過ぎ。私も母もぐったりと放心状態でソファに座った。

 母は顔を両手で覆い、重いため息をついている。

 これからやらなければならないことはたくさんあるのに、頭と体が追いつかない。

「もう終わりだわ……名雪流の恥」

 母の呟きに驚いて息をのむ。

「お母さん、終わりって……」

 事の重大さはわかっているが、〝終わり〟とは……?

 大きく息を吸いこんでから顔を上げた母は悲痛な面持ちで、私の胸がギュッと締めつけられる。

「お金が戻ってこなければ多額の借金が残ることになるわ」

「借金は……六百万――」

「花器もたくさん購入しているわ。経費が……あぁ……今は考えられないわ」
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