財界帝王は初恋妻を娶り愛でる~怜悧な御曹司が極甘パパになりました~
「慣れていないので……」

「それは私にとっては喜ばしいことですね。あなたはとても可愛い」

「可愛くは……」

 なんて返事をすればいいのかわからず、オウム返しになる。ちらりと斜め前の運転手へ視線を向けた。

「ますます好きになりましたよ。あなたも私を好きになってほしい」

 運転手に聞かれているかもしれないのに妙に甘い言葉を続けるので、更に居心地が悪くなった。ずっと握られている手が汗ばんでくる。

「私は積極的な人が苦手で……あの、汗で」

 汗を理由に克己さんの手から抜き取った。

「あなたが消極的なので、私が積極的になるんですよ」

「もう少し時間をください」

 今の私にはそれしか言えなかった。


 リビングに足を踏み入れると、ソファに座っていた母が驚く。

「おかえりなさい。早かったわね」

「明日は謝恩パーティーがあるから」

 ソファに座らずに、さっさとお風呂に入ってひとりになりたかった。

「まだわからないわ。お風呂に入って来る」

「疲れたでしょう? お風呂に入ってきなさいな」

「うん」

 コクッと頷きリビングを離れ、二階の自分の部屋へ着替えを取りに行った。
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