財界帝王は初恋妻を娶り愛でる~怜悧な御曹司が極甘パパになりました~
「飲みたいんです」

「これ以上飲むと気持ち悪くなるぞ」

「京極さん……」

 押し切らなきゃ。

「大丈夫、です。もっと飲みたいんです」

 思い切って振り返り、離れたところにいるスタッフに手を上げる。私と目が合ったスタッフがこちらにやって来た。

「メニュ――」

「君、コンシェルジュに部屋を取るように伝えてください」

 京極さんに遮られ、その言葉にあぜんとした。

 コンシェルジュに部屋を取るように……?

「京極様、かしこまりました」

 顔色ひとつ変えずにスタッフは頭を下げて去って行く。

「どうした? 口が開いているぞ?」

「今、部屋って……」

「酔っぱらった女を抱く性癖はない。紗世、俺としたいんだろう?」

 京極さんの言葉を頭の中で反復する。

〝俺としたいんだろう?〟

 私の望みが聞き入れられたの……?

「紗世?」

 黒い瞳に私が映るくらい不敵な笑みを浮かべる端整な顔が近づき、そっと唇が重ねられる。

 唇が塞がれた瞬間、電流が体に走ったような感覚に襲われた。

 私のファーストキスだ。
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