その騎士は優しい嘘をつく
「アン」
 ハイナーは彼女の背に手を回したまま、身体を起こす。

「ちょ、ちょっと、ハイナー。な、何を」

 二人、裸で向かい会う形で起き上がってしまった。

「孕まないんだろ?」
 ハイナーに耳元でそう囁かれてしまったら、アンネッテの胸の奥がぞくぞくと音を立てて始める。これから起こるであろうことに、少し期待を寄せて。

「『しない』んじゃなくて『しにくい』だけだから」

「まあ、孕んでも問題ないから、何も問題はないな」

 問題があるとしたら、アンネッテの身体が持たないかもしれないということ。医者からそういった行為の許可は出ているけれど、何よりも産後だし、彼を受け入れたのは一年ぶりだし。
< 71 / 85 >

この作品をシェア

pagetop