その騎士は優しい嘘をつく
 やはりアンネッテは悪阻が重かった。また治癒院を休んでいる。だから、ハイナーが治癒院へ足を運ぶたびに、あの団長からはじろりと睨まれてしまうのだ。

「もっと、もっと」
 と、絨毯の上では、ハイネスがぽんぽんと飛び跳ねている。

「ああ、もっとだな。だが、お父さんは疲れてしまったから少し休憩だ」

「すこしねー」
 ハイネスは仕方なく、一人で何かを始めたようだ。

「アン。俺は、ずっと君に聞きたかったことがあるのだが」
 ハイナーが彼女のお腹に手を添えながら、そう言った。

「なあに?」

「その、なぜアンのような女性が、俺のことを好きになってくれたのか、ということ。ずっと聞いてみたかった。その、俺のような男と一緒になって、後悔していないかと、いつも不安になってしまう」

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