その騎士は優しい嘘をつく
 ハイナーはアンネッテの手をとると、そっとその手を自分の傷痕に添えた。治せるかもしれないと言われた傷痕だが、それは未だに残っている。
 彼女が治せるかもしれないと言ってくれた傷痕。君に負担がかかるから、このままでいいと言ったら、そこに口づけをしてくれた彼女。
 それからはこの傷痕も彼自身の一部だとも思えたし、彼女もそれを自分の一部として受け入れてくれたからだ。
 それでも、このように醜い自分が彼女に好かれていることになかなか自信を持つことができなかった。二人目の子を授かっても、その自信の無さは続いている。

「おとーしゃん、おとーしゃん、おやすみ、おしまい」

 ハイネスがハイナーに突進してきた。そして、彼の膝の上によじのぼってくる、ハイナーはアンネッテの手を離して、息子を抱き上げた。

「おとーしゃん、おとーしゃん、あそぼあそぼ」

 ハイナーの膝の上でぴょんぴょんと飛び跳ねるハイネスの体力は、恐らくハイナー譲りなのだろうと、変なところで思い出すアンネッテ。
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