最初で最後の恋をおしえて
朝食を食べ終わると、「ホットミルクでも飲まないか。ソファで待ってて」と言われ、返事を聞く前に彼はキッチンに向かう。
言われた通りソファに移動すると、戻ってきた羽澄からマグカップを渡された。彼は当たり前にすぐ横に座る。
肩を寄せ合い、ぬくもりを共有し合う距離感は心地いいかもしれない。
「紬希にとって、どうなれば恋をしたと言えるの?」
優しく問いかける聞き方は、構えずに思ったままを伝えられた。
「親戚の子は毎日が楽しそうでした。ほかにも世界がキラキラして見えるって」
「でも紬希はそうじゃないと」
「それは、まあ、はい」
全く違うわけじゃない。たしかに最初の頃は楽しかった。普段なら少しだけ憂鬱な月曜も、どうやって小学生の恋を再現しようかと考えたりして。
「紬希の意見を聞くと、自信がなくなってくるよ」
力なく笑う羽澄に、紬希の方が質問をする。
「大和さんは、どうして」
「ん?」
「えっと、大和さんはどのタイミングで、その、そうだなあって思えたんですか?」
視線が上を向き、なにやら思い出しているような顔つきをしてから、「それ、本人に言うもの?」と、苦言を呈した。
「だって、よくわからなくて」
渋い顔をしてから、「まあ、話してもいいんだけど」と口を開いた。