最初で最後の恋をおしえて

「本当に突き返すかどうかは、中身と俺の気持ちを聞いてからにしてくれないか」

 返事をする前に羽澄は紙袋から出し、リボンを解いていく。蓋を開けると、中にはひと粒のダイヤ。

「わあ」

 つい感嘆詞が漏れ、口を押さえる。

「綺麗だろ? ひと目惚れした。特に、涙を閉じ込めたみたいな形が気に入った」

 美しくカッティングされたダイヤは、涙の形をして輝きを放っている。

 ネックレスになっているようで、羽澄はチェーンを手にし、紬希に近づける。

「ネックレスの名前は"愛を込めて"。俺からは、もう泣かせないという意味を込めて紬希に贈りたい」

 ゆっくりと紬希の首にかけていく羽澄。紬希は両手で顔を覆っても、涙を堪え切れなかった。

「また泣かせてしまったな。やっぱり受け取れない?」

 紬希は首を横に振る。

「それなら、どうして泣いているのか聞かせて」

 羽澄は紬希の髪を優しく梳かす。紬希はつかえつつ、気持ちを話した。
< 115 / 143 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop