最初で最後の恋をおしえて
「時計の件を聞いたあとで、私はお金がかかる女だと思われているんだと」
「そういうつもりじゃなかったんだけどな」
コクコクと首を何度も縦に動かして、「勝手にそう思ってしまったんです」と気持ちを吐露する。
「大和さんは女性に慣れていそうでしたから、プレゼントもいつも」
そこまで話すと、羽澄は被せ気味に意見する。
「したことない。きみだけだ」
捲し立てるように言って「フッ」と笑う。そして「ほら、今だってこんなにも余裕がない」と嘲笑する。
「安物をもらうと、自分はこの程度かって目くじらを立てる女性もいると聞くのに、紬希の心を読むのは難しいよ」
「ずっと如月のお嬢様という立場がつらくて、大和さんは違うって心のどこかで」
「それなのに、ほかの奴らと同じなのかって失望した?」
首を横に振る。失望したのは、きっと自分自身にだ。
如月のお嬢様。だから高価な贈り物をしなければならないと思われている自分。そして、それさえしていればいいと思われていると安直に考えてしまった。
だから傷つきたくなくて、羽澄から距離を取ろうとした。
今ならわかる。プレゼントを頑なに受け取れなかったのは、自分の方こそ彼が好きだったからだ。
羽澄の本当の気持ちがわからなくて、上辺だけの言葉やプレゼントを受け取りたくなかった。