最初で最後の恋をおしえて

 微睡(まどろみ)の中、目を開けると、羽澄はスーツを身につけている最中だった。

「羽澄さん? どこかにお出かけですか?」

 ネクタイを結びながら「大和でしょう?」と指摘され、おでこにキスをされる。

「だって、なんだか急に遠く感じてしまって」

 フォーマルな格好をすると、整った彼の顔立ちやスタイルの良さが際立つ。柔らかな表情で触れ合っていた彼とは、別人みたいだ。

「如月眞太郎氏と会う約束がある」

「えっ、それなら私も」

 如月眞太郎。紬希の父親だ。

 紬希は立ちあがろうとしても、体は思うように動かない。

「無理しなくていい。これは俺のケジメだ」

 袖口のシャツのボタンを確認している彼は、緊張感を纏っている。

「もしかして、婚約を断るつもり、ですか?」

「まさか」

 破顔させ、再びベッドの近くに来る羽澄に安堵する。

「でも、私が動けないように、わざと、ですよね?」

 執拗に攻められ、しばらく眠ったのに足がガクガクしている。

「言いがかりだ。俺は純粋に紬希と愛しあいたかった。敢えてというのなら、その気持ちをセーブしなかった」

 ベッドの端に腰掛けて彼は「悪かったよ。結局、昼は抜きにして」と言って、紬希の髪を梳かす。
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