最初で最後の恋をおしえて
シャワーを浴びると、幾らかはシャンとして、準備に取り掛かる。
羽澄が作っておいてくれた小さめのおにぎりをつまみながら、髪を乾かす。ドライヤーも彼が率先してやってくれ、至れり尽くせりだ。
服だって、紬希がシャワーを終える頃には、着てきた服一式が脱衣所に置いてあった。もちろん洗濯済みのもの。
羽澄の協力で、行くと決めてから凄まじいスピードで準備を済ませ、タクシーに乗った。
それから上品なワンピースを選び、化粧も済ませてから、父との会食の場所へ向かった。
首元には、羽澄からプレゼントされたネックレスが揺れている。
食事の席につくと、ほどなくして父がやってきて、紬希を目にして驚いた表情を浮かべた。
「羽澄くん。きみが紬希をこの場に連れてくるとは思わなかったよ。そうか。ふたりは上手くいっているようだね」
紬希にとっては、いつもの父だ。娘の紬希に甘く穏やかな父。
けれど羽澄は、固い顔で頭を下げた。
「紬希さんとのお付き合いを、お許しいただけませんか」
父は目を見開き、紬希に一度視線を向けてから、再び頭を下げている羽澄に視線を戻して言った。
「もう婚約しているのだから、付き合いの許しもなにもない。現に、昨日は泊まったのだろう? 今後も一緒に住めばいい」
寛容な言葉を聞いても、羽澄は重ねて言う。
「決められた流れに沿った形式的なものではなく、男として付き合いを認めていただきたいのです」