最初で最後の恋をおしえて
「わたしも忙しい時期が重なり、交流が途切れていた間に、きみのお父さんは亡くなっていた」
父は言葉を切り、なにかを飲み込んでから、気持ちを吐露するように再び話し始めた。
「頼ってほしかった。せめて話してほしかった。きみのお母さんは、自らわたしに頼ってくる人ではなかったからね。きみのお父さんが亡くなったと知ったのは、随分あとだった」
シンとした静けさのあと、羽澄が「だから俺を支援しようと考えたのですか?」と質問を向けた。
両手をテーブルの上に組み、父はその手を見つめている。そして顔を上げ、羽澄を真っ直ぐに見据えて言った。
「きみのお父さんは、男のわたしでも惚れ惚れする男だった。その息子は、自分の娘と同じ年頃だ。いいご縁にならないだろうかと考えた、親の身勝手な気持ちだ」
羽澄は納得ができない様子で、頭を横に振る。
「俺じゃなくて良かったはずです。紬希さんなら、もっといい男がいる。如月にとって、もっといい人物もいる」
「だからだよ」
羽澄の声を遮り、父が割って入る。
「紬希には、如月に振り回されない人生を送ってほしかった。だから如月とはなんの関係もないきみと交渉した」
考えてもみなかった父の考えを聞き、紬希は声も出せない。
父は声を落とし、「そのせいで、きみにつらい思いもさせたようだ。すまなかった」と羽澄に謝罪した。