最初で最後の恋をおしえて

 会社が始まると、想像よりもずっと事態は好転していた。

 笹野が羽澄にちょっかいを出さなくなったためだろうか。ほかの女性社員も羽澄と紬希に対して、必要以上に絡んでこなくなった。

 葵衣には、晴れて恋人になった報告と、近々一緒に暮らすかもしれないと話したら喜んでくれた。

 正式な結婚となると如月家も関わるため、まだまだ話は進んでいないけれど、紬希にしてみたらその方がありがたかった。

 ふたりの恋はまだ始まったばかりだ。ゆっくり愛を育んでいければ。そう思っていた。

 なにより、周りの景色が違って見えて驚いた。

 彼に恋をしていると認めた途端、世界中がきらめいて。何気ない日常の風景がキラキラしていて、心も軽やかでスキップしたくなる気分だった。

 幸せは呼応してやってくるのか、小さな喜びを日々感じた。コーヒーを注文するとサービスのクッキーがもらえたり、道行く赤ちゃんが笑ってくれたり、空に虹がかかっていたり。

 でもそれはきっと恋の魔法で、うれしい出来事に出会う度、彼に報告したくなるから余計に鮮明に映るのだと思う。
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