最初で最後の恋をおしえて
今は毎日のように、羽澄のマンションに寄り夕食を共にしている。
今日は、見よう見まねでガパオライスを作った。
肉は『豚挽肉にしよう』から始まり、『バジルは欠かせない』と、聞きかじりの情報とネットのレシピだけを参考に作っていく。
ナンプラーの独特の香りと、白身の縁がこんがり焼けた半熟卵が食欲をそそる。
普段から料理をしている羽澄は、包丁さばきも板についている。紬希もほどほどに料理はできるため、いつもキッチンに仲良く並んで作る。
「本当、如月のお嬢様にはいつも脱帽させられる」
"お嬢様"と呼ばれるのが嫌で、つい口を尖らす。
「どうせ世のお嬢様と違って、お淑やかでもなんですないですよ」
「まあ、たしかに若干、お転婆だろうね」
苦笑する羽澄に、ますます不貞腐れた声が出る。
「ガッカリなお嬢様で申し訳ないですー」
かわいくない物言いなのに、羽澄は柔らかな表情で言う。
「俺だけ料理が出来て、紬希を甘やかすという夢は無くなったな」
「私は甘やかされるより、一緒がいいです」
顔を見上げ、チュッと軽くキスをする。
「こら、危ないだろ?」
包丁を持つ羽澄が嗜める。
「だって、キスしたかったんです」
「それは、夕食を食べてから」
そう言いつつ羽澄は包丁を置き、紬希と唇を重ねる。
「ほら、いつまで経っても完成しない」
「本当」
ふたりで顔を見合わせて笑い、それから料理を再開させた。