最初で最後の恋をおしえて
ある程度進めたところで、ひと息つく。気づけば、かなりの時間が過ぎていた。
集中していると時間を忘れて没頭するのは、好きなことを仕事にしている充足感があるのだが、約束を忘れてしまいそうになるデメリットもある。
重要な会議などは、リマインダーに予定を入力しておくとしても、ふんわりした口約束はつい忘れてしまう。
今日は小学生の恋する行動を、羽澄と再現する任務が課せられている。
周囲に悟られないよう注意しつつ、羽澄の様子を観察する。席にはいない。目だけ動かして見える範囲を探してみると、課長となにやら難しい顔をして話している。
再び仕事に集中してしまえば、思い出さないまま一日が終わるかもしれない。彼が席に戻ったタイミングで、仕掛けることにした。
視線を送ると、彼も気づいたようだ。
彼はおもむろに、自分の手の甲を円を描き撫でた。
きっとこれが合図だと理解し、羽澄にだけ見えるように紬希も真似してみせた。
実は、自分だけで小学生のノリを再現できる自信がなく、今日はこの行動をしようと思っていると朝の段階で提案してあった。
学校の離れた席に座るふたりは、休み時間になると、片方が大袈裟なポーズを取りアピールすると、片方がそのポーズの真似をする。というシンクロ遊びをしている。
それをしようと思うと、スマホで伝えてあった。
しかしやってみて、これのなにが楽しいのかわからない。周りにバレないだろうかという緊張感はあるものの、真似できた達成はない。それとも真似された方は、うれしいのだろうか。
小学生の気持ちがわからないまま、お昼休みになってしまった。