最初で最後の恋をおしえて
その後、終業時間を迎えると、前と同じコーヒーショップへ急いだ。
歓迎会を開いた幹事が開催場所に拘りを持っていた人で、会社からの近さよりも、店の料理で選んだらしい。
だから歓迎会後に寄ったコーヒーショップも自ずと、会社からは離れているため、職場の人たちに関わりを隠している身としては打ってつけの場所だった。
コーヒーショップに着き、店内を見回してみると、羽澄の後ろ姿を発見した。
「お疲れ様です」
「お疲れ。先に出たと思ったのに、遅かったね。大丈夫だった?」
穏やかで低い声が、優しく問いかける。
「それは、はい」
羽澄の隣に歩み寄り、手に持った紙袋を渡す。
「ん? なに?」
渡されるまま羽澄は受け取り、紬希はカウンター席に腰掛けた。
「プレゼントです。親戚の子は付き合った記念にってもらったらしいんですけど」
紙袋から中身を出した羽澄は、目を細めて微笑む。
「へえ。かわいい」
かわいらしいライオンの小さなぬいぐるみ。手に収まるサイズに惹かれ、つい手に取った。
「ちなみにお揃いです」
紬希は自分用に買ったネズミのぬいぐるみを見せる。葵衣の例え話を思い出し、笑いを堪えつつも買わずにはいられなかった。
犬や猫などメジャーな動物がいる中で、敢えてこの二匹を選んだ意味を、羽澄はもちろん知らない。